2021年11月

金属屋根

ガルバリウム鋼板が登場するまで、昭和初頭では金属屋根は今ほどメジャーな屋根ではありませんでした。高価なものとあって、神社の銅板屋根として用いられるくらいでした。 今も昔も板金工と呼ばれる専門の職人さんが金属屋根の工事を行っています。 戦時中は、金属が戦車や銃に使われる統制品となり、金属建材を住宅で用いる機会がなくなり、板金工が激減しました。 戦後は亜鉛メッキ鋼板、いわゆるトタンが登場し、瓦の凍害が多い東北地方や北海道で普及がはじまります。 しかし、トタンは「錆びやすい」デメリットを抱えており、瓦やカラーベストに次ぐ第3の屋根としてのポジションが続きます。 その背景の中で登場したのがガルバリウム鋼板です。 【アメリカのベスレヘム・スチールが開発した新しいメッキ鋼板。】

トタンのデメリットであった、錆びやすさが格段に改良され、徐々に市場で認められるようになります。 しかし、金属屋根というと以前は「音がうるさい」「夏は暑く冬は寒い」「見た目が悪い」などの理由から毛嫌いする方が多いのですが現在ではその評価も大きく変化してきました。

金属屋根は災害によってその価値が高まって来ました。1923年関東大震災です。地震による大規模な火災が発生し、燃えない金属屋根は注目を浴びる様になりました。 1995年の阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋の多くが瓦屋根でそのことにより、軽い金属屋根が注目を浴びました。阪神・淡路大震災を機に建築基準法が改正され耐震基準が強化されました。 平成から令和にかけて発生した大地震や大型台風の影響もあり屋根材の見直しが進んでいます。 長年の実績と評価により、ガルバリウム鋼板を中心とする金属屋根がもっとも多く使われる屋根として確立されてきています。

金属屋根には様々な素材がある

  • 現在、金属屋根の中で最もメジャーなのがガルバリウム鋼板です。 アルミニウム55%・亜鉛43%・シリコン1,6%のメッキを0,4㎜程度の鋼板にメッキしたものです。トタンからの発展形であり、瓦棒葺きや立平葺また平葺など長尺で使う屋根材です。
  • ガルバリウム鋼板が登場する前は大半を占めていたのがトタンです。メッキ鋼板でその成分はほぼ亜鉛が占めています。ガルバリウムよりも耐用年数が短く錆びやすい特徴があります。
  • レアですが以外と見る機会がある銅板 銅というと初頭はピカピカの十円玉と同じ色をしていますが、年月と共に茶色くなります。十円玉を水に付けて放置しておくと緑色の物質が表面に出来たのを見たことがある方も多いかもしれません。この緑色の物質はカビではなく、酸化銅で緑青(ろくしょう)と呼ばれるものです。この緑青は不導体被膜と呼ばれるもので、この状態になると安定し酸化が進まなくなると言われています。施工後半年程まばらな変色ですが、1~2年程で均等に茶色に落ち着き綺麗な緑青色のなるには永年かかります。ガルバリウム鋼板の色ラインナップで緑青色もあります。屋根材として使用すると明るく綺麗な緑青色の屋根が葺きあがります。 
  • 高価だけどステンレス キッチンのシンクなどでステンレス製の方も多いのではないでしょうか。油や熱湯、酸性の果実と様々な汚れがありますが、表面に錆びができてもすぐ剝がれますし何十年も使用出来ることからその耐久性は理解出来ると思います。 ステンレス製の屋根材や外壁材は錆びや腐食には強いのですが、ガルバリウム鋼板に比べて同じ厚さでも固いわりには打痕や歪みが目立ちやすいです。また高価なところがネックです。ステンレスは鉄に炭素1.2%、クロム10.5%を含む合金です。
  • ジンカリウム鋼板 ジンカリウム鋼板とは、アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコでメッキされた鋼板です。ガルバリウム鋼板と比べて亜鉛とシリコンの割合が0.1%しか違わないのです。たった0.1%の違いですが、ジンカリウム鋼板はガルバリウム鋼板に比べて耐久性に優れています。ジンカリウム鋼板を使用した屋根材の表面に石粒が吹き付けられており、この石粒が付いた屋根材は「自然石粒付き鋼板」と呼ばれています。

金属屋根のの形 

  • 縦葺き  屋根の頂点である棟から軒先に向かって、屋根材と屋根材をハゼと呼ばれる繋ぎ目が縦方向に降りてくる葺き方です。ハゼの形状によって縦葺きの中で更に分けられます。緩い屋根勾配から急勾配まで対応できます。 屋根形状にもよりますが比較的ローコストでリーズナブルな価格で仕上がります。
  • 横葺  屋根の棟と平行に降りてくる形状です。段のようになっているのが特徴です。屋根材一枚一枚が地面と平行見えます。段を目立たせないようにするものや、反対に段を大きくして目立たせるものがあります。段を大きくすると重厚感が増した感じがします。(段葺きとも言います)
  • 平葺  形状は横葺と同じで、棟と平行に降りてくるやねです。横葺と違う点は段が強調されず、屋根全体が平らでスッキリとした感じに見えます。あらゆる屋根形状に対応でき、神社などに使用されたいる銅板に用いられ、曲線を表す事もできます。 
  • 菱葺き  正方形の屋根材やひし形の屋根材を1枚ずつひし形組み合わせる工法です。甲羅のような模様のデザインが特徴です。 菱葺きは平葺の一種ですが基準墨を細かく正確に出して屋根材を1枚ずつ葺きあげ手間がかかる為施工費用が高くなってしまいます。外壁のワンポイントとして施工する事もあります。
  • 金属瓦葺き  瓦屋根を金属鋼板で模したものです。見た目は瓦屋根とほぼ同じに見えます。またかわらに比べて軽いので「瓦屋根が地震が心配」と言う方にオススメです。
  • 折板屋根  一般木造住宅では馴染みがないとおまいますが、鉄骨構造の建物や工場、倉庫、駐車場などで使用されています。板厚が0.6㎜以上の鋼板を屋根のに合わせ1枚で葺きあげる縦葺きの一種です。 タイトフレームなど専用の取り付け金具に締付固定します。ルーフデッキのようにボルトナットが見えるタイプや接合部が丸ハゼ又は角ハゼ形状で吊り子で締め付け固定するタイプがあります。

金属屋根は長尺の製品が基本的です、一般的に4m前後の製品メインですが、縦葺き、横葺きに問わず屋根の全長や全幅に合わせてオーダー注文できます。ただし、屋根材を搬送する大型車両が入って来れること、もしくは現場成型可能な事が前提条件です。 屋根材を荷上げする際にレッカー作業になると現場敷地内に作業場所確保しなければなりません。 屋根材運送費・荷上げレッカー費は別途かかる事も考慮して下さい。