重ね葺とは?メリットデメリットや葺き替えとの違いを解説!

現状調査依頼や雨樋の取り替えや補修などでお邪魔させて頂くお施主様などから時々ご質問されるキーワードが「重ね葺?」「カバー工法?」何が違うの?施工内容や工法が違うの?仕上がりに違いがあるの?などのご質問を受けることがあります。 答えは「重ね葺とカバー工法は同じです。」そしてその返答として私が付け加える言葉は「昭和と平成の違いです。」 地域によっては現在でも重ね葺と呼び名が定着している地域があると思いますが、平成中期頃から改築工事からリフォーム工事へと呼び名が変化してきました。その頃から徐々にカバー工法と言われるようになり現在はカバー工法という呼び名がメインになりました。失礼な言い方かも知れませんが、重ね葺を少しオシャレに(横文字風)変換させた呼び方をカバー工法と言います。 極稀に工場や倉庫などの施設では断熱性・遮熱性・防音性を強化目的で新築時からダブルパック工法を採用する場合もあります。 今回は重ね葺と言う呼び名でカバー工法などをご紹介いたします。

重ね葺とは 

リフォーム工事における重ね葺とは、既存の屋根材を撤去せず、残した状態で新たに屋根材を被せる工法です。既存屋根に重ねるから重ね葺です。 安く早くを重視した施工方法になります。 

重ね葺のメリット

  • 工事費用が安い  既存屋根の役物部分しか撤去しないので工程が短縮され人件費や手間が抑えられ、費用も安くなります。
  • 工事期間の短縮  既存屋根の撤去作業の工程がないので工期も圧縮できる
  • 廃材処理費・アスベスト処理費削減  アスベストを含む屋根を葺き替えでリフォームした場合、アスベストを含まない場合に比べて20~50万円程度の追加費用がかかります。
  • 断熱性・遮音性の向上  重ね葺は古い屋根材と新しい屋根材の2層構造になるため屋根裏の『暑さ・寒さ』や雨音などのが室内に伝わりにくくなります。
  • 通常生活が送れる  既存屋根の撤去工程が無いので急な天候不良に見舞われても雨漏りの心配も少なく、冬季でも室内が寒くなってしまう心配も少いでしょう。

重ね葺のデメリット

  • 下地のチェック点検が出来ない・直せない  重ね葺は既存屋根の上に新しい屋根材をかぶせる工事なので、屋根下地などの劣化などを直せる訳ではありません。 もし雨漏りが発生していた場合、屋根下地を直さず重ね葺で新しい屋根材を葺いても雨漏りが直り表面も綺麗に仕上がりますが下地の劣化は進行し続きます。
  • 耐震性が少し低下する  既存屋根の重量に新しい屋根材重量が加算されますので建物に負荷がかかり地震時の揺れも大きくなるでしょう。(しかし金属屋根は軽量屋根ですので、屋根重量が2倍になる訳ではありません。耐震構造の建物でしたら問題ありません。)
  • 新しい屋根材は金属屋根に限られる  瓦屋根は重ね葺が出来ません。カラーベスト屋根の上に新しいカラーベスト材を直接重ね葺することはできません。もし仮に重ね葺工法で仕上げ材をカラーベストにする場合は、既存屋根の上に更に野地板を張りその上に仕上げ材のカラーベスト材を葺く事になります。野地板の重量とカラーベスト材の重量が乗る事になります。もともとカラーベスト材の強度は強くありませんが、釘の効きが悪く更にもろい仕上げ材となるでしょう。 金属屋根は、長尺でビス止め施工なので強風や自然災害に強い事と雨仕舞や既存部分との納まりも綺麗仕上がります。

重ね葺と葺き替えどちらかを選ぶ?

重ね葺がお勧めな場合
  • 安さを重視する  リフォーム工事をするが屋根の吹き替えをするのは予算が厳しく安価で仕上げたい。また同時に雨樋や外壁などもリフォームしたい。
  • アスベストが含まれている場合  既存屋根がアスベストを含んでいる場合は撤去費用と処分費用が割増になる場合に重ね葺は撤去処分が必要ないので最適でしょう。
  • 工事後、10年~15年で転居または取壊し予定がある場合  重ね葺は以後の工事費用が増額します。重ね葺の上に重ね葺は出来ません。次回は重ね葺の部分だけを撤去しなければなりません。もしくは下地の劣化が進むと最初からやり直す為撤去費用が2倍になります。金属屋根は20年前後の対応年数がありますが、屋根下地は古いままなので築15~20年で重ね葺をした場合、実際的には重ね葺き15年後は屋根下地の状態はは築30~35年以上です。重ね葺きご15~20年後には住まなくなる予定であれば最適でしょう。その間の大掛かりなメンテナンスも必要ありません。
葺き替えをお勧めな場合
  • 建物に長期間または広範囲に雨漏りが生じている場合  過去に雨漏りを起こしたことなある建物は下地や躯体に痛みが生じているでしょう。その状態で重ね葺をしても表面は綺麗になりますが中身の下地は腐食が進んでいる可能性があります。 
  • 将来的に増改築の予定がある場合  屋根が2層になって分厚くなった部分は撤去の手間と費用が増します。
  • 地震で建物が揺れやすく耐震性に不安がある場合  耐震基準に満たない築30前後の建物は重量的な事を考慮して避けた方か良いでしょう。地震による揺れや基礎土台の強度不足による沈下や傾きが心配されます。
  • スレート屋根で仕上げたい場合  重ね葺は重量や強度を重視して金属屋根1択と言っても良いでしょう。

 

重ね葺はメリットも魅力的ですが後々のデメリットも考慮して慎重に決断下ください。金属屋根は対応年数が長くメンテナンススパンも長いので1度施工してしまえば長期安心な工法です。

重ね葺=カバー工法ですが、違った視点で新築時から重ね葺を施工する場合まあります。