地震による揺れと屋根の重さの関係 

近年では、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大災害が予測され、政府や地方自治体がハザードマップを改正したりSNSのネット上では大地震関連の記事や予言説などが多くアップされています。私の山梨県は海が無いので津波による被害はありませんが、山に囲まれているので地滑りや河川の氾濫のよる水害は予想されています。特に警戒になくてはならないのが富士山の噴火です。南海トラフ地震による富士山噴火への影響が大きく関わると言われています。自然災害は止める事は出来ないので自分の身は自分で守しかないのです、同時に家族も守らねばなりません。家族が在宅中の地震が発生し家が倒壊してしまえば、家族を守る事が出来ません。最新の耐震基準をクリアしていれば大きな被害は避けられるかも知れませんが、築年数的に基準を満たさない住宅が多く危険視されています。せめて家族全員が避難完了するまで倒壊は避けたいものです。耐震基準に満たない場合はどの様な対策が良いのか考えてみましょう。

各屋根材の重さ

建築基準法において各屋根は「非常に重い屋根」「重い屋根」「軽い屋根」の3っに分類されます。

屋根材 重さ 建築基準法による分類
土葺き瓦屋根 60㎏/㎡ 非常に重い屋根
瓦屋根・セメント瓦 42㎏/㎡ 重い屋根
コロニアル屋根 20㎏/㎡ 軽い屋根
金属屋根 5㎏/㎡ 軽い屋根

 

一般的な広さの家屋 100㎡(約30坪)の場合
土葺き・瓦屋根 スレート・コロニアル屋根 金属屋根
約6t 約2t 600㎏
軽自動車7~8台分 軽自動車3台分 軽自動車0,7台分

屋根の重さで耐震性が決まる。陶器(粘瓦)屋根と金属屋根で比較すると8倍以上の差があります。

軽い屋根材について

スレート・コロニアル屋屋根は「軽い屋根」に分類されていますが重さは瓦屋根の半分程度です、そのためコロニアル屋根は思っている以上に重い屋根と評価する人もいます。その一方金属屋根は瓦屋根の1/8~1/10です。コロニアル屋根と金属屋根では4倍近く重さが違うにもかかわらず建築基準法では同じ「軽い屋根」のカテゴリーとして分類されます。(個人的なボヤキ(笑))

地震時の揺れは家屋の重心の位置に大きく影響を受ける

  • 屋根が重いと重心が高くなる?

地震時の家屋の揺れはその重心位置に大きく左右されます。屋根が重いと必然的に重心位置も高くなってしまうため不安定さも増します。そのため揺れも大きくなってしまうのです。また実際の揺れは先端になればなるほど遠心力が大きく働くため重さの数倍以上の力が加わることになります。(歩き始めた子供の様に体よりも頭が重くゆらゆら歩き転びやすい感じ) つまり屋根が軽ければ軽いほど重心位置も下がり減震も期待出来ます。

構造計算と屋根の重さ

建築家を目指す人は建物の構造耐力に関する「構造力学」を必ず学びます。その構造力学の計算式の中で「壁量計算」と呼ばれるものがあります。この計算式で地震に耐えることが出来る建物の壁量(地震耐力壁)を求められます。壁量を求めるためには、まず初めにチェックするのは「屋根の重さの係数」です。この屋根の重さの係数は屋根材の種類によって変わります。

瓦屋根から金属屋根に葺き替えた場合の耐震性能

建築基準法には、一般住宅の耐震基準が定められており、その目安となるのが耐震等級。1等級→2等級→3等級と等級が上がるほど耐震性が高くなります。各等級の地震係数は家屋の構造に対する耐震補強性能を表しています。

金属屋根に葺き替えることで地震係数はほぼ同じで耐震等級がアップ

地震係数とは、それぞれの等級を満たすために必要な耐力壁などの係数を表したものです。当然ですが重いものを支えるには柱がたくさんあった方が安定します。その柱や壁の数と考えてください。思い瓦屋根の家屋で3等級の耐震性能を得たい場合は柱や壁の数が必要となります。軽い金属屋根ではその数が少なくなります。瓦屋根の家屋は重い屋根を支えるように設計されています。その家屋を軽い金属屋根に葺き替えた場合、既存の柱や壁はそのままで屋根の重さは10分の1になりますので確実に耐震性能はアップします。

地震より台風の影響を重視していた時代

昔の人は屋根は重ければ重いほど良いと考えていました。「台風」による被害を避けるためです。地震よりも台風で屋根瓦の飛散を防ぐことの優先順位が高かったのです。昔の屋根瓦は瓦を土で抑える湿式工法(土葺き屋根)で葺かれていました。しかし現在では考え方が真逆となっています。屋根は重くするのではなく軽くすることが重視されるようになりました。昔と今では使用している建材や道具が進化してます。昔は釘打ちでしたが現在ではエアー釘打ちで大きな釘も一発で奥まで打ち込め強度も強いです。ビスや金物などや電動工具の進化普及に伴いより強固な施工と短期施工ができるようになりました。と同時に昔は亜鉛板(トタン)でしたが現在では進化してガルバリウム鋼板となり屋根材形も強度が増し軽くて飛ばない屋根ができました。重ければ風に飛ばされにくい、という事も分からなくもないですが  🙁  おそらく伊勢湾台風による教訓なのでしょうか?

大型地震が相次ぎ地震と屋根の因果関係は証明されています。屋根瓦は湿式工法を用いず乾式工法で葺く様になりました。軽量防災瓦など軽い陶器瓦も普及しています。特にリフォーム市場ではガルバリウム鋼板などの軽量で耐久性の高い屋根材に使用が急速に拡大しています。地震による家屋倒壊などの影響を避けるために屋根を軽くする事は公的機関の認定試験等により評価されています。

リフォーム時における注意点

耐震と屋根の重さについて述べさせて頂きましたが、重い瓦屋根を軽量の金属屋根に葺き替えた場合です。スレート・コロニアル屋根を金属屋根でカバー工法をした場合ではありません。新築時の設計の段階で屋根材がスレート・コロニアルと表記さている場合は構造計算はスレート・コロニアルの重量で耐力壁を設定されています。カバー工法は既存の屋根と新設屋根材の重量が「屋根の重さ係数」となり、地震耐力壁は不安になります。特に外壁が窯業系サイディングの場合はサイディング自体に強度はありません。あくまでも外壁の化粧仕上げ材なのです。築20年以上の場合は現在より耐震基準違う事と建材による劣化も懸念されます。 柱や筋交いの増設は大規模修繕工事が必要となってしまい厳しいでしょう。そこで提案❕ 耐力壁を高める方法は外壁のカバー工法です。もちろん金属サイディングです。現在では窯業系サイディングと同じ色や柄があります。金属サイディングのカバー工法は屋根カバー工法と同じで1枚毎、間柱及び胴縁に(455㎜ピッチ)ビス止めします。窯業系サイディングとは違い金属サイディングは本体ビス止めなので横ずれせず、1枚1枚が筋交いや耐力壁合板の役目をします。柔らかい壁を硬い素材で強化するイメージで良いと思います。